INGING MOTORSPORT

GT300 2016 総括

ranking
#51 JMS LMcorsa 488 GT3/都筑晶裕・新田守男・脇阪薫一

2016年総括 スーパーGTシリーズに挑むLMcorsaは2016年もGT300に2台体制とし、51号車はBMW Z4 GT3からフェラーリ488 GT3にスイッチ。「JMS LMcorsa 488 GT3」として挑み、引き続きメンテナンスはインギングが担当することとなった。

 ドライバーとして新たに起用されたのは2008年のポルシェカレラカップジャパンでクラスチャンピオンに輝いた経験を持つ都筑晶裕選手。スーパーGTには翌09年から参戦、ジェントルマンドライバーながら豊富な入賞経験を持っている。パートナーには継続参戦の新田守男選手が就き、また昨年のレギュラードライバーだった脇阪薫一選手もテクニカルアドバイザーとして全戦チームに帯同するだけでなく、第2戦・富士と第6戦・鈴鹿には第3ドライバーとして加わることが決まった。

 開幕前には岡山国際サーキット、そして富士スピードウェイで行われた2回の公式テストに参加。合計4日間にわたってしっかりと走り込み、万全の構えとした後、開幕戦の舞台である岡山国際サーキットに乗り込むこととなった。

 最初の戦いとなる予選では、まず新田選手がQ1で2番手につけて好発進に成功。続くQ2では都筑選手が自己ベストを更新して9番手につける。

 決勝ではスタートを都筑選手が担当し、オープニングラップで12番手に後退するも6番手を争う集団について周回を重ねていく。7周目にはひとつポジションを戻すがトラフィックが激しく、またあらかじめタイヤは無交換で最後まで行く予定だったことから、タイヤをいたわって走り続けている都筑選手にはなかなかそれ以上の上昇が許されない。そこで25周目に早めのドライバー交代を行うことにし、予定どおりタイヤ無交換で新田選手をコースに送り出す。作戦は見事に成功し、視界が開いて単独走行になった新田選手はマシンのポテンシャルを最大限に引き出して周回を重ね、全車がドライバー交代を済ませると6番手に躍進。さらに58周目には1台をパスし新体制での初戦を表彰台には届かなかったものの、見事に5位という結果で終えることとなった。

2016年総括 続く富士スピードウェイが舞台の第2戦には、当初の予定どおり脇阪薫一選手がCドライバーとして加わった。予選のQ1は引き続き新田選手が担当して9番手を確保し、Q2に挑んだ都筑選手は11番手につける。

 決勝のスタートを担当した新田選手はまずはポジションキープでレースを開始するも、その後はストレートでオーバーテイクショーを繰り広げ、5周目には8番手に浮上。ライバルが早めの交代を強いられている中その後も順調にロングスティントをこなし42周目に都筑選手へバトンを託す。8番手でコースに送り出された都筑選手は、コンスタントに周回を重ねつつ後続を引き離していった。その最中にセーフティーカー(SC)ランがあり、セーフティーカーが離れた70周目にすかさず都筑選手をピットに呼び寄せる。その判断が的中し、ラストスティントを担当する脇阪薫一選手は5番手でコースに復帰。ゴールまであと10周というところで最高速で圧倒的に勝るGT-Rにストレートで逆転を許すも、6位でフィニッシュし、2戦連続で上位入賞を果たすこととなった。

 本来ならばこの後にオートポリスでシリーズ第3戦を迎えるはずだったのだが、熊本地震の影響でサーキットの施設にも損傷がありレースは中止となってしまう。そして、後に最終戦と併せてツインリンクもてぎで代替レースが行われることが発表となる。そのためシリーズそのものは2か月半のブランクが空いてしまうも、その間にはスポーツランドSUGO、鈴鹿サーキットで公式テストが行われたことから、マシンのセットアップやドライバーの習熟はより一層進んでいった。

2016年総括 そして迎えたスポーツランドSUGOが舞台の第4戦。ここまでの2戦でマシンは燃費に優れ、またタイヤに優しいコーナリングマシンであることが明らかになっていただけに、アップダウンの激しいテクニカルレイアウトにもマッチするのでは……という予想がされていた。

 予選はQ1を新田選手が担当。なかなかクリアラップが取れず本領を発揮することは許されなかったものの、8番手につけてQ2で待つ都筑選手にバトンを託す。周を重ねるごとにタイムを刻んでいった都筑選手は10番手につけ、5列目グリッドから決勝に挑むこととなった。

 決勝はセミウェットからの開始となり、ドライタイヤを装着して挑んだ都筑選手はポジションをキープし安定したペースで周回を重ねていく。24周目にコース上でアクシデントがあり、SCがコースイン。SCが離れて間も無く29周目にタイヤ無交換で新田選手への交代を行うと、やがて順位をひとつ上げて9番手に。だが、バックマーカーに行く手を阻まれ続ける不運もあってそれ以上の上昇がなかなか許されないばかりか、反撃のチャンスを伺っている中まだ6周を残した段階で赤旗終了となってしまう。そのため3戦連続での入賞には成功したが、9位でのフィニッシュとなった。

2016年総括 続く富士スピードウェイが舞台の第5戦では、都筑選手が初めてQ1を担当。最も走り慣れたコースで自信に満ちた走りを披露し、10番手につけて難なくQ1突破に成功する。後を受けた格好でQ2に挑んだ新田選手は3番手を獲得。今季最上位のグリッドから表彰台を目指すこととなった。

 決勝のスタートは引き続き都筑選手が担当。グリーンシグナル点灯と同時に鋭いダッシュを決めて、トップにも襲いかからんばかりの勢いを見せる。だが、そんな都筑選手に不運が襲う。予想より早い段階でフロントのグリップ不足を感じるようになり、普段のレース以上にタイヤの厳しいマネージメントを強いられたのだ。それでも30周目まで我慢の走行を続け新田選手にステアリングを託したものの、ピットでの作業中にドアが外れるなどさまざまな不運が重なっていったん17番手まで後退してしまう。そこからの挽回は凄まじかったが、入賞まであと一台が遠く11位でフィニッシュ。悔しくも連続入賞は3戦でストップしてしまった。

 シリーズ第6戦は伝統の一戦「鈴鹿1000km」としての開催に。第5戦に続いて予選のQ1を都筑選手が担当するもタイヤが予想以上に発動せず19番手に甘んじ、Q2突破は果たせず。しかし、予選終了後に上位の車両にペナルティが課せられたことから、ひとつポジションを上げて9列目のグリッドに着くこととなった。

 天候が目まぐるしく変わった決勝には、新田選手がスタート担当としてまず挑んだ。セミウェットの路面にドライタイヤを選んでいたことが功を奏し順位を上げ続けていたものの、路面状態が落ち着くと逆にトラフィックに苦しむように。そこで早めの交代を17周目に行い、脇阪選手へとバトンタッチ。9番手まで上がって54周目に都筑選手と代り、77周目からは再び新田選手がドライブするが、その直後にセーフティーカーが入るアクシデントが起こり、位置関係が悪かったことからトップとは周回遅れになってしまう。108周目からは再び脇阪選手が走行。この時点で11位を走行するも、時おり降る雨が脇阪選手の行く手を阻む。142周目からゴールまでは都筑選手の担当。だが、最後になって強く降ってきた雨が、都筑選手の行く手も阻んでしまった。2戦連続で11位という、苦々しい結果が残された。

2016年総括 第7戦は今季初めて海を渡って、タイのチャーンサーキットが舞台となった。それまでの状況を覆すにはまたとない環境でもあったが、予選のQ1は久々に新田選手が担当するも、ソフトタイヤが全く路面に合わず17番手に留まりQ2突破は果たせなかった。

 決勝のスタートも新田選手が担当。7周目には13番手まで上がり、また36周目まで周回を重ねてマシン、ドライバーともどもタフネスぶりを示す。この我慢が功を奏して、暫定2番手まで順位を上げて都筑選手にスイッチ。タイヤ無交換で送り出されるも、ピットイン時にミッションに不具合が生じ、抱えてしまったロスによって13番手まで後退してしまう。その後1つポジションを上げたが、またしてもあと一歩のところで入賞を果たせずに終わった。

 そして迎えた、ツインリンクもてぎでの最終大会。金曜日に設けられた公式練習ではまさかの事態が。新田選手が濡れた路面に足を取られ、クラッシュしてしまったのだ。そのため午後からのセッション2を走行することは出来なかったが、それでもメカニックの懸命の修復によって土曜日早朝に行われた第3戦代替レースの予選には間に合い、セミウェットコンディションの中、苦労に応えようとした新田選手の激走で8番手を獲得することとなる。

 決勝のスタートも新田選手が担当しポジションキープでしばらく周回を重ねるも、予想以上に上がった温度がタイヤのグリップを早々に奪ったことから、やがて11番手まで順位を落とすことに。そこで予定を早めて18周目に都筑選手との交代を行うとともに、タイヤはワンランク硬めなものに変更。このチョイスは正解だったものの、ロングスティントとなってしまったことで終盤には踏ん張りが利かぬ状態に……。そのため、またも11位でのフィニッシュが精いっぱいとなってしまう。

2016年総括 日曜日の第8戦は、予選を都筑選手が担当。18番手となるも、今季最後の戦いは、どのチームもリスク承知の走りで挑むはず。そこに上昇のチャンスが生じるものと予想されていた。スタートから間も無く、実際に14番手を争う集団に都筑選手は続いていたものの、13周目に駆動系のトラブルが発生。走行続行は不可能と判断し、コース脇に都筑選手はマシンを止めていた。

 これまでチェッカーは受け続けてきたが、集大成とするべき今季最後のレースでリタイア。ドライバーランキングでも16位に甘んじ、悔しさが残るエンディングではあったがいつまでも打ちひしがれている場合ではない。LMcorsaは早々と来季の継続参戦を表明。新たなシーズンで、今季応援して下さった皆様のためにも必ずリベンジを果たしたい。

 

2016年総括ドライバー/都筑晶裕

 ニューマシン、新体制で挑んだ2016年、マシンも岡山テストの直前に届き正直なところ不安はありましたが、初戦から5位、第2戦の富士では6位と前半戦は入賞でき、結果もついてきて常に表彰台を狙っていけるポジションでは入れたことは良かったです。しかしさすがにJAF-GT勢のスピードにはついていけず、後半戦は不運も重なり入賞圏内に入れなかったのは残念でした。ただ、最終戦を除くすべてのレースで完走しチーム一丸となって戦えましたし、自分にとっては良いレース経験ができてチーム関係者、スポンサーの方をはじめ、最後まで応援していただいた関係各社の皆様には感謝しております。
個人的な反省点は多々ありますが、新田選手や脇阪選手、チームスタッフとともニューマシンのパフォーマンスを最大限に発揮するべく幾度となくミーティングを重ねてレースに集中でき、メカニックの迅速なセットアップにより最大限のデータが取れたことは、来年に向けて大きな収穫と言っていいと思います。ベテランの新田選手からはレース展開を含め多くのことを学びました。自分の引き出しがさらに増え、今後のレースに必要なより良い収穫を得られたのは間違いありません。

 

2016年総括ドライバー/新田守男

 シリーズのはじめは良かったというか無難にやれて、チームとクルマの高いパフォーマンスをどこで最大限に活かせるかなと思ってやってきたんですが、途中からBoPの変更も若干あって、それがフェラーリにとってはあまりいい方向でなかったのが辛くなってしまった理由なのかな、と思っています。後半はトラブルも出てしまったこともあって、本来僕たちが目指しているポジションでレースができていなかった一年だったような……。
想像以上にJAF-GT勢の進化が著しく、その後に僕らを含めたFIA-GT3勢が続きますよね。ちょうどそのあたりのポジション争いが激しくなってくる分、本当に緻密に作戦や作業を、そして僕らの走りもしっかりやっていかないと棚ぼたで上がれる感じではなかったので、その辺りのパフォーマンスが僕らのチームに足りなかったかな、という印象はありました。全体的に見てもうちょっといい結果が残せたかなと思っています。
ただ、またフェラーリで走れるようであれば今年はデータもすごく取れましたし、フェラーリのいいところも悪いところも見えました。BoP次第ではありますけど、持っているパフォーマンスを今年以上に発揮できるという確信はあります。今年も予選にしても決勝のラップにしても決して悪いところにはいなかったので、それをちゃんとポジションにつなげられるレースができれば来年はもっと面白いシーズンとなることを期待してもらっていいと思います。引き続きの応援をよろしくお願いします。

 

2016年総括監督/小林敬一

 なんともオフのテストも含め開幕からしばらくはいろいろありましたが、クルマそのもののバランスがいいので試行錯誤しながらでもドライバーが慣れていくにつれ、速さは出せていけたと思うんですよ。ただ、年間のランキングではAシードの枠に入れたのですが、もう少し行けたのかなというのはありました。今まで扱ったことのない日本国内にもう1台しかないクルマなので、セッティングに追われた一年だったかもしれません。
SUGOや鈴鹿でもうちょっと行けたんじゃないかな、と悔やまれることはいくつかありますが、都筑選手が新たに加わって新しいクルマになって、すべて新しいパッケージでの初年度でしたから、そういう背景からすればみんな一丸となってやれたんではないかと。最後にリタイアで終わってしまったのが残念でしたが、確実に来シーズンにつながるレースがシーズンを通じてできたと思います。1年間ありがとうございました。これからも応援よろしくお願いいたします。

 

RACE CALENDER

  • ▶ R1 OKAYAMA 4/09-10
     
  • ▶ R2 FUJI 5/03-04
     
  • ▶ OFFICIAL TEST
     
  • ▶ R4 SUGO 7/23-24
     
  • ▶ R5 FUJI 8/06-07
     
  • ▶ R6 SUZUKA 8/27-28
     
  • ▶ R7 THAILAND 10/08-09
     
  • ▶ R3 MOTEGI 11/11-12
     
  • ▶ R8 MOTEGI 11/11-13
     
  • ▶ 2016 総括
     
  •  
  • ▶ 2015年のREPORT
ページのトップへ戻る